３種類のテキスト発行

－企業、中・高校生用など－

石田正治　　by ISHIDA Shoji

教育用テキスト「蒸気機関は世界を変える」

　ドイツ博物館は、教育用に３種類のテキストをシリーズにして発行している。
　ひとつは、企業内教育・実業補修教育用のテキストで、技術史を領域毎に詳しく解説したシリーズである。例えば、原動機、工作機械、空圧機械、航空機、造船といったテーマが取り上げられていて、中身は黎明期から現代に至る各分野の技術の歴史を豊富な図と写真でビジュアルに述べたものだ。教育用ではあるが技術史の入門書としても格好のテキストである。
　中高校生向きの学習教材は、博物館の展示資料を見たり触ったりしながら技術史を学ぶことができるようにしたもので、「蒸気機関は世界を変える」「滑車からディーゼルエンジンまで」「エンジンから車輪へ」など興味深いタイトルの付いたテキストである。この「ドイツ博物館で知識を深める」シリーズは、ミュンヘン博物館教育センターとドイツ博物館との共同研究の成果から生まれたもの。内容は、各章各テーマ毎に、Ａ博物館展示資料についての質問、Ｂ質問に答えるための参考となる解説、Ｃ歴史的な補足説明、という三部構成になっていて、生徒が博物館資料を見ながら物理と技術史の学習ができるようにしたものだ。いずれにしても、ゲーリケの大気圧の存在を示したマグデブルクの半球、ディーゼルのディーゼルエンジン第１号など本物を前にして学習できるのはうらやましい限りだ。　新しいシリーズとして「技術史と職業教育・模型と復元」と題したテキストがある。舞ぎり、ステレオスコープ、シャガード織機の３種のテキストがすでに発行されていて、技術史をモノづくりから学ぶ内容である。実際に歴史的なモノを復元する作業を通して、技術の発明・発見の歴史的意義、あるいは発明の問題点や技術者の工夫を体験的に学ぶための教材となっている。そのために、復元物や模型の全部品の図面を収録している。
（中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治）

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